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2005年05月08日
音色・メッセージ
「音と文明 ~音の環境学ことはじめ / 大橋 力 著」を読んでうれしい衝撃を受けた。
映画「AKIRA」で音楽を担当した「芸能山城組」の主宰者・山城祥二氏とこの著者が同一人物であることにも、不思議な納得を覚える。
「遺伝子に約束された音」「言語・音楽と脳」といった興味深いキーワードを切り口に、尺八と西洋楽器、ガムランと西洋のオーケストラ、森と里と街、などの周波数分布比較を例にあげながら、音と生命の関わりを浮き彫りにする。
~きこえない音~
人間が聴き取ることのできる周波数の上限は20kHz程度という「常識」が現在のCD、mp3などの音に関わる商品フォーマットの前提になっている。
しかし、尺八・ガムラン・森の音環境の周波数分布はそれをはるかに超える100khzまでの帯域を豊かに、ゆらぎをともなって含んでいるという。
しかもその違いが私たちに影響を与えているらしい。
同じ音楽素材をつかって「CDクオリティーの音源」と「100kHzまでの倍音を含んだ音源」を比較すると、その違いを聴き取ることはできない場合も多い。
しかしその場合でも、脳波に生じる変化(!)を実験でとらえることに成功している。
きこえてなくても、きこえている。
音は食べ物や飲み物と同じように「いのち」に関わる事だ。
そんなことを科学的にも証明してくれたような感じでうれしくなった。
~音楽とメッセージ~
本著にこんな記述がある。
「環境から私たちに到来するメッセージの中には、ある種の栄養素や毒物がそうであるように、感覚ではとらえきれないのに生命に決定的な作用を及ぼすものがある」
メッセージというとつい言語化されたものを連想しがちだが、「気配」や「雰囲気」もメッセージだと考えることができるし、人間はそういうメッセージを「察知」する能力を持っているわけだ。
(本著ではさらに「文明がこれまで無視し、あるいは忘却してきた知覚圏外のメッセージの存在と効果」を明白にしながら、「遺伝子に約束された環境のデザイン」にまで論が及ぶ。)
音楽の場合のメッセージでも同様に、まずは「うた」が連想される。
それは力強く、認知という意味で伝わりやすい。
リズム、メロディー(フレーズ)、グルーヴ、ハーモニー、ストラクチュア、テンポ、ダイナミクスなども(聴き取ることができる)メッセージといえるだろう。
さらに、「音色=メッセージ」ととらえることもできる。
音色に含まれる倍音。
通常音色として認知される倍音は、聴き取ることができる範囲(20kHz)内であろうが、認知されなくても生命に直接影響を与える高周波倍音の存在を考えると、「音色はより根源的で強力なメッセージ」といえないだろうか?
音色というのは楽器本体からでる倍音だけではない。
奏者の身体の共鳴、呼吸、演奏会場の響きなどが絡み合って生み出されるものだ。
その意味でも「うた」はやはり強力にメッセージを伝える。
優れた歌手の声が豊かな倍音構造をともなっていることが多いのは有名な話だが、声という音色の持つメッセージとうたわれる「ことば」のメッセージにより、深さと伝わりやすさ両方を兼ね備え、メッセージは増幅される。
ことばをともなわない器楽の場合、そのメッセージの伝わりやすさ・わかりやすさは、前述の聴き取れる範囲の要素(リズム、メロディーなど)に影響を受ける。
しかしメッセージ(=音色)の深さ・重要性においては、オーケストラであろうと、ベースソロであろうと、口琴ソロであろうと変わりはない。
「ベースソロだから…」という言い訳はできないな。と思う。
by iidamasaharu
コメント
久しぶりです。
この記事を読んで、最近思ったんですが、
何が喜ばしいかって、やはり、ディジタル録画した音楽では感じ取れない奥深さがライブ演奏にはあり、それは永遠にそうであることなんですよね・・・
いい音楽聴きたければ、ライブに出かけてきなさい!っていうことですな。圧縮効率を考えると、製品として量産できる、周波数範囲の十分広いメディアとメディアプレーヤーは当分できそうにもない。できるとすごいことになる・・・
では、東京近郊でのライブをたのしみにしています。
投稿者 HaLu : 2005年09月04日 03:38
今日、このブログを再度、読みました。
それで気になったのが、携帯電話やノートPCなどの電源ICのノイズのこと。
今日出席した、
「電源ICの作り方セミナー」(テキサス・インスツルメンツ社)
にて、スイッチング電源の設計課題の一つとして取り上げられたものに、スイッチング周波数の設定がありました。
スイッチング電源はPWM(パルス幅変調)方式を採用した駆動効率制御を行って、自己消費電力を極力無駄のないようにしている。
この方式は、電源がたくさん電流を食われるとき:負荷が大きいとき には、たっぷり時間をかけてコイルにエネルギーを蓄えるが、負荷が小さいときは短い時間だけコイルに電流を流すようにしていて、無駄をなくそうとするもの。
このとき使われるパルスの周波数は、可聴帯域を越えるように、20kHzよりも早いものにしてある。
!!数年前の使い捨てフラッシュつきカメラは、フラッシュを充電するたびに、”きゅぃーーーん”というサウンドがものものしさを感じさせていた。あれは、中の電源のスイッチング周波数が20kHz以下であるためだ(今日知った)!!
たとえば、電源のスイッチング周波数が30kHzとすると、エネルギー的にはどんどん小さくなるのだけど、3倍高調波:90kHz、6倍、9倍・・・とさらに高い周波数の高調波が同時に存在している。
ブログで紹介されている著書の議論によれば、これらの高調波も人間の「いのち」に影響を与えていることにはならないか?!だとするとどんな影響だろうか?
TI社が量産しているスイッチング電源の周波数には3MHzまでのものが存在している。コンパクトで電池を長持ちさせたい携帯機器ほど、周波数の高いものが必要となっている。
さらに気になることには、電池を長持ちさせるため、PFMモードといった制御方式も併用している。この方法では、電源が電流を食われないような、待ちうけ状態のような場合には、発振周期を数百Hz程度まで落とすことになり、なにか工夫しないと電源の音が、待機中に聞こえてくるといった問題まであるそうだ。
そうでなくても(そしてこの場合耳には聴こえない)、広い範囲に周波数が変化する電源のスイッチングノイズを、自分達の脳に近づけたり、持ち歩いたりしているといった状況は、今後ますます広がってゆくことが確実である。
スイッチングノイズは人間にどんな影響を与えるのか?
何百年も経た後、進化した人間の形態や性質は、携帯機器のノイズによって方向付けられて行くのだろうか?!
電池がすぐなくなる古い機器を使ってゆくようにした方がいいのだろうか???
大変けったいな話であります・・・・ではまた。
HALU
投稿者 HaLu : 2006年07月06日 22:36
今回紹介されている書物に似た類のものをいろんな角度で模索したり、読んできましたが、改めて音(響き)の本源的な意味を考えるきっかけになったように思います。
お世話になりながら随分ご無沙汰しています。ご活躍の様子、時々HPなどで読ませていただいてます。当方も何とか生き延びて地味にライブを続けています。
お元気でご活躍ください!!
投稿者 SHO : 2007年06月14日 08:02
SHOさん
コメントありがとうございます
小樽運河近辺もあれからずいぶんと変わりました
またお会いできる時を楽しみにしています
投稿者 いいだ : 2007年06月14日 11:06