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2020年01月30日

【ダンモの話 2】

「ダンモ」が「モダンジャズ研究会」の通称であると前回書いた。

これは音楽業界でかつて多用された「逆さ言葉」である。
「モダン」がひっくり返って「ダンモ」となる。他にも「コーヒー」→「ヒーコー」、「ギャラ」→「ラーギャ」、「逃げる」→「ゲルニ」など。他にもいろいろ例を挙げたいところだが、教育上あんまりよろしくない言葉しか思い浮かばないのでこのくらいにしておく。
あと、正直言うとこの逆さ言葉、ぼくはちょっと苦手で、固有名詞として定着している「ダンモ」以外あんまり使う事はなかった。
ちなみに逆さになった言葉は抑揚はつけずに発音することが基本で「コー(→)ヒー(→↓)」が「ヒー(→)コー(→)」となる。
「とう(→)きょう(→)」「でん(→)わ(→)」とかと同じ。
ダンモ初期のメンバーであるトランペットの森田先輩は、逆さ言葉の愛称がそのまま芸名「タモリ」となった。
おそらく日本で一番知られた逆さ言葉だ。そして、この場合だけ、先に挙げた抑揚は例外となる。

さて、高校時代に楽器を始めてから大学2年でダンモに入部しウッドベースを弾き始めるまでを書いた前回の続きだ。

夏休みには志賀高原で合宿があった。
合宿初日には、C年(ダンモ1回生、ツェーネン)が1人ずつ先輩の中に加わって演奏する「オーディション」がおこなわれ、その結果をふまえて先輩がC年バンドの編成を決める。
その段階でC年の人数は、ベースがぼくと鈴木進輔君の2人だけ、ドラムとピアノが各10人弱、ギターとボーカルが各2,3人、管楽器が10数人で合計40人くらいだったか。もう少し多かった気もする。
バンドは10組ほどとなり、C1〜C10などと番号で呼ばれる。ベースが2人だけだったからたくさん弾かねばならず、指の血豆が割れたりもして大変だった記憶がある。

ダンモ合宿ではもうひとつ特徴的なイベントがある。
最終日に行われる「演芸会」だ。
お笑いショーみたいなもので、大学生が合宿でやるわけだからお下劣な方向になることは簡単に想像できると思う(例えば新入生の女子にロウソク持たせてSMショーもどきとか)。
そして、その演芸会と絡めてとある通過儀礼が行われる。
こちらはあまりにもくだらないので内容はもちろん呼称すら書けない。
ここでは仮に「KM」とする。性的な要素を含み、かつ羞恥心を捨てさせることが目的とか言われそうな内容だ。「早稲田 ダンモ 儀式」で検索すると情報があるかもしれないが決して調べないようにお願いしたい。
ぼくは「なんで音楽やりにきたのにお笑いショーをやんなきゃいけないのか」という反感が強く、最終日の演芸会はダンモE年の時までずっとボイコットして1日早く帰っていた。
面白い人が面白いことをやってるのをみるのは楽しいが、別にやりたくも無い人が無理やり力で強要されるような事は大の苦手なのだ。
当時はハラスメントなんて言葉はまだ無かった。
そして「KM」についてもぼくだちの代の頃に廃止されたと記憶する。(このあたりは同期ジャーマネのサックス奏者浅川宏樹君が詳しいはず。)
「演芸会」はその後どうなっているのかはちょっとわからない。

音楽のことも書かなければ。
先輩がとにかく上手かった。
ぼくが入部した年のレギュラーグループは、サックス 高野浩雄さん、ピアノ 川村結花さん、ベース 土井孝幸さんと佐藤ハチ恭彦さん、ドラム 清水達生さん。
残念ながらサックスの高野さんは2014年に病気で急逝したのだが、他の皆さんは現在それぞれの世界で大活躍している素晴らしいミュージシャンばかりだ。
当時のぼくにとっては、プロとしても何の遜色も無いようなレベルの演奏だった。
技術も個性もあってエネルギッシュな演奏には聴くたびに圧倒された。
そんな中、ぼくはへなちょこなくせに気概だけは十分で、先輩から見たら随分と生意気な新入生だったことだろうと思う。

その後、途中でぼくは大学生ではなくなったが、E年になってレギュラーグループを努め、ダンモだけは最後までまっとうした。
レギュラーグループでは学生の分際ながら夏に演奏ツアーの機会があり、北陸、関西、四国で演奏した。
実家がある小松に近い金沢の「もっきりや」でのライブでは、当時闘病中でその翌年に亡くなった父に演奏を聴いてもらえたことが忘れられない。

ダンモ在籍中から演奏の仕事を始め、F年になって引退(普通は皆、4年生で就職活動に取りかかるのでE年までで引退するのが常だった)したころから、新宿のクラブ(お姉さんがいる方)でのハコ仕事(毎日固定のお店でレギュラー出演する仕事のこと)と音楽専門学校での講師の仕事で生活していくことになった。
1992年頃のこと。

by iidamasaharu

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