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2019年03月23日

地球の音はE(低め)

高校の先輩である地震学者の束田進也さんから教えてもらった話。

地球には上下方向に振動している。ボールを上下に押しつぶしてそれが元に戻って、というような振動だそうだ。

その固有の振動周期は54.1分(*)らしい。
その周期をHz(ヘルツ=1秒ごとの周波数)で表すと
1/(54.1×60) =
0.00030807Hzとなる。

それをひたすら倍々で大きくしていき、人間の最低可聴周波数を超えるのが
40.38Hz

これは、標準的な4弦コントラバスの最低音 E(=ミ) にあたる(やや低めである)
言い換えると、地球自体の振動は、コントラバスの最低音のさらに17オクターブ下のE音だともいえる。

ちなみに、やや低め、というのがどのくらいかというと、このE音に対するA音(=ラ)を計算すると430.7Hz
(正確には、上記E音の4オクターブ上のEのさらに5度下のA音)
現代の基準ピッチ440Hzから10Hz程低い

基準ピッチについては色々な説があるが、バロックの時代など古くは現代より低かったようだ。

地球が持っている固有な振動の内もっとも大きなスケールのものが音としてはEであることを、ずーっと昔の人が感じ取っていて、それがまわりまわってコントラバスの最低音がEになった。
と、そこまでいうのはやや夢見がちな話かもしれないが、その共通点に漠然としたロマンを感じるくらいのことは許して欲しいものだ。

(*)日本音響学会にある束田さんの論文には53分とあるが、ご本人から54.1分と伺ったのでそちらを記載している。でもその話を聞いた時は酒も入っていたのであまり自信はない。
地球.jpeg
Bass.jpg

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2019年03月02日

音楽は世界を変える

「音楽は世界を変えることはできないけれど・・・」といういい方を時折見かける。
ぼくは、音楽は世界を変えられると思っている。音楽だけじゃなくて、文学、美術などほかの芸術分野だってそうだ。
といっても、音楽で政治が動くとか、音楽が扇動することで人を動かすとか、そういうことでは、もちろん、ない。

世界というのは、人の認識で出来ている。
万人にとって共通のひとつの世界というものが存在するわけじゃない。ある人にとって最高な世界が、別の人にとっては最低な世界であることは珍しくない。
ある一つの出来事があったとして、それがどのような意味を持つかは、それを見る、あるいは体験する人のとらえ方が決める。
その意味では、過去だって変わりうるものだ。過去に起きた出来事そのものは不変だとしても、それをどう受け止めるか、そこにどんな意味を見いだすかは、人の認識が決めることだ。

それから、世界というものがぼくたち人間とは別に独立して存在するかというと、そうでもない、ということもある。
そこに生きる人間の意識までを含んだものを「世界」という。あるいは「宇宙」といってもいい。
(量子力学や関連するたとえ話「シュレーディンガーの猫」を連想する人がいるかもしれない。
・・・おっと、こちらに話がそれていくと戻って来れなくなるのでそれはおいといて。)

さて、音楽体験は、泣いたり笑ったり共感したりと人の感情に直接アクセスするし、時に人に大きな感動を与える。
でもそれだけではなくて、そしてもっと重要なこととして、音楽体験は人の認識に作用するものだ。
圧倒的な音楽体験は、その人の持つ、感情よりもっと深いどこかに働きかけて、何かを変える。
泣いたり笑ったりという感情の動きは一時のもので、時間の経過と共にだんだん元に戻っていくが、その深いところでの変化はそうではない。
そして、その体験を経た後、その人にとって世界は違うものになっている。世界に新たな価値や意味が加わり、よりよい世界になっているはずだ。
それがたった1人だとしても、その人にとっての世界はもう変わっている。
より多くの人であればもちろんそれは大きな変化にもつながる。でもたとえそれが1人だったとしてもすごいことではないか。

ぼくたちが(あるいはあなたが)生み出す音楽や作品が誰かに届き、その人にとって昨日まではひどいものであった世界が、少しはましな世界になる。生きていくに値する世界、あるいはより素晴らしい世界となる。

音楽は世界を変えるんだ。

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